-
子どものうつ病
Posted on December 21st, 2008 No commentsうつ病は、ゆううつな気分と自責感を主症状とする精神障害で、精神と身体の活力が全体的に低下している病態です。児童精神科の外来を訪れる子どもたちの13〜25%はうつ状態を示しております。2対1で男の子に多いのですが、思春期以後は性差はありません。口数が多く、活動量が増す躁状態と交互にみられることもあります(躁うつ病、または双極性感情障害[そうきよくせいかんじようしようがい]と呼ばれる状態)。うつ病の原因はまだ解明されておりません。しかし、子どものうつ状態の75%は、親子関係、学校状況、友人関係などの心理学的な原因によるといわれており、体質または脳の器質的な原因によるものは6〜8%といわれております。
子どものうつ病の症状
表情が乏しく行動量が減少する
子どもがうつ病になると、特に理由がないのに表情が乏しく、行動量と活動性が減少し、好きなテレビも見ず、友達や遊びに関心を示さなくなります。また、食欲がなくなり、体重が減少し、眠りが浅く、いらいらして怒りっぽくなります。一般に、朝方は調子が悪いのですが、夕方になると気分が落ちついて元気が出てきます(日内変動[にちないへんどう])。頭痛、吐き気、腹痛などの身体症状を訴えて学校に行きたがらず、成績が低下してくるようなこともあります。ゆううつな気分は、健康な子どもにもよくみられることで、それだけですぐに病的なものと断定することはできません。身体的な病気のかかりはじめにみられるけだるさや元気のなさ、さらに軽い意識の障害を、うつ状態と見誤ることもあります。統合失調症でもうつ状態がよくみられますし、近親者の突然の死去、離別などによって、反応性のうつ状態がみられることがあります。いわゆる不登校との区別は、容易にはできません(表19―10)。
-
注意欠陥/多動性障害(AD/HD)
Posted on December 21st, 2008 No comments多動で落ちつきのない子どもは多く、親の育て方の問題、子どもの気質や中枢神経系の成熟障害など、さまざまな原因が考えられます。心理的な原因や、親の養育態度の問題ではなく、発達レベルや年齢に著しく不相応な注意散漫、多動、衝動性が7歳以前からみられる場合、注意欠陥/多動性障害(または多動性障害)と診断されます。
どのような症状か
3歳ごろから落ちつきのなさ、なれなれしさ、かんしゃくなどで気づかれますが、学齢期になりますと学業成績不良、情緒不安定、自分勝手な行動、不器用などが目立ってきます。視覚・運動系の不統合、脳波異常、神経学的微細徴候(掌紋[しようもん]、指や耳の形などのごく軽度の形成不全)などが認められることがあります。状況や場面によって子どもの行動が著しく変化することが特徴です。このため、子どもの行動の評価は、両親および教師からの情報を参考にしながら、診察室、行動観察室、遊戯室、さらには待合い室などのさまざまな場面における行動観察によってなされなければなりません。
どのようなタイプがあるか
注意欠陥/多動性障害には、主として不注意が問題となるタイプと、多動や衝動性が問題となるタイプ、さらにいくつかの症状が混在するタイプの3つがあります。多動や衝動性は年齢とともに減少する傾向がありますが、反抗的で反社会的行動がみられるようになるケースもあり、行為障害と診断されることもあります。また、不注意は比較的長くつづき、大人になってもみられることがあります。
-
学習障害
Posted on December 20th, 2008 No comments最近、学習障害または学習困難という用語をよく耳にしますが、誤解されていることがずいぶん多い用語です。
計算、書き取りなどの発達が遅れる
ある限られた領域の発達(学習能力、言語、運動)が、その子どもの教育レベルや知的能力から期待されるレベルに到達しないものを「特異的発達障害[とくいてきはつたつしようがい]」といいます(図19―17)。このうち、学習能力について特異的に発達が遅れている場合、学習困難とか学習障害といいます。計算、書き取り、読み方、構音、話し言葉、言葉の理解のどれかがその子どもの全体的なレベルから明らかに落ち込んでいる場合です。脳の中にある情報処理機構になんらかの機能的な成熟の遅れがあると想定されております。当然のことですが、ほかの発達障害と共通する行動特徴をもっており、注意が散漫で落ちつきがなく、かんしゃくを起こしやすいのです。
-
精神遅滞
Posted on December 20th, 2008 No comments代表的な発達障害のひとつで、18歳までに、知能の発達が平均より劣っており、同時に適応機能(社会的技能と責任、コミュニケーション、日常生活習慣、自立、経済力など)の障害が認められるものをいいます。さまざまな広い領域に及ぶ発達の遅れで、バランスのとれた全体的な遅れであることが特徴です。精神薄弱という用語は、最近ではほとんど用いられず、知的障害が行政用語として用いられています。知的機能が遅れていることで自閉症や学習障害と混同されることがあります。
精神遅滞の原因
ダウン症、フェニルケトン尿症など、遺伝、代謝、感染、外傷などのさまざまな原因によるものがあります。脳の機能の成熟障害が存在すると想定されております。心理的・環境的な原因で発達が遅れている場合には、精神遅滞とはいいません。
-
アスペルガー症候群
Posted on December 20th, 2008 No commentsアスペルガー症候群は、1944年にオーストリアのハンス・アスペルガー教授が4例の男児について報告し、「自閉的精神病質」と呼んだのが始まりです。1980年代になってから、アスペルガー症候群として再登場し、広く用いられるようになりました。
自閉症との違い
自閉症と同じ広汎性発達障害[こうはんせいはつたつしようがい]のひとつです。乳幼児期に言葉の遅れがないことが自閉症と異なるポイントですが、奇異な行動をしたり、自分の気持ちをうまく伝えられない、あるいは相手の気持ちを思いやれない、友だちと遊べないなど、対人関係の発達に問題をもっている点でよく似ています。これまでの研究では、アスペルガー症候群の子どもは、約300人に1人はいると考えられていますが、臨床的な診断には慎重を要します。
どのような症状があるか
対人関係の障害や特定のものや事柄への異常なこだわりは自閉症と同じようにみられますが、明らかな言葉の発達の遅れがみられません。しかし、独特な考え方や言葉の使い方があり、杓子定規[しやくしじようぎ]で融通が利かず、特定の事柄に没頭し、自分のもっている知識に強くこだわったりするために、「偉そうな子ども」とか「変わった人」と思われ、疎外されてしまうことも少なくありません。もっとも特徴的なことは、相手の気持ちを読みとることができず、独断的な言動が多いことです。その場の雰囲気を読みとれず、状況にふさわしくない言動をしたり、比喩[ひゆ]や冗談が理解できなかったりします。
-
自閉症
Posted on December 20th, 2008 No comments1943年に、アメリカのレオ・カナー教授が報告したもので、最初は幼児期にみられる精神病のひとつと考えられていました。現在では、発達障害と考えられており、中枢神経機能の成熟の遅れによるもので、3歳までに症状がみられ、広い範囲に及ぶゆがんだ(アンバランスな)発達の遅れとされております。
自閉症の原因と症状
「自閉症」という用語には「殻に閉じこもっている子ども」というイメージがあり、親子関係の葛藤[かつとう]が原因(神経症的な発症)と考えられていたこともありますが、現在では、その考え方は完全に否定されています。脳機能の障害または成熟の遅れが主要な原因であることは間違いがないのですが、どんな種類の障害(例えば、感染症、外傷、血管障害、生化学的な代謝障害、遺伝子の異常など)か、脳のどの部位の障害か、どのくらいの広がりかなどはわかっておりません。乳幼児が現す特有な発達障害に対して、不安に満ちた養育がなされつづけますと典型的な自閉症状が形成されることになります。
年齢によって症状の現れ方が異なる
もっとも特徴的な症状は、3〜5歳ごろにみられる症状です。表情に乏しく、視線を合わせようとせず、ほかの子どもに無関心で遊びの輪に入ることができません。睡眠のリズムが不規則で、極度の偏食や、奇妙なこだわりがみられます。パターン化したもの(例えばテレビのコマーシャル、時刻表など)を記憶することは得意ですが、場面に合った行動を起こすことができず、思うようにならないとかんしゃくを起こすか、わけのわからないことを早口で、単調にしゃべり始めます。光や音に過敏ですが、名前を呼んでも反応せず、話し言葉の発達が遅れています。奇妙なしぐさ(例えば耳をふさいだり、手をひらひらさせたり、くるくる回るなど)を頻発し、自傷行為(頭や顎[あご]をたたく、手をかむなど)がみられます(表19―9)。
-
不登校、家庭内暴力
Posted on December 20th, 2008 No comments不登校とは
身体的には何も問題がなく、知能的にも十分な能力をもっているにもかかわらず、なんらかの情緒的な問題によって登校できない、または登校しようとしないことを主症状とする状態が「不登校(登校拒否)」といわれているものです。不登校は、こころに悩みをもつ子どもたちが示す症状のひとつですから、いわゆる精神病ではありません。学校での友人関係の極端な問題(いじめ、仲間はずれなど)があったり、教師の誤った対応(意味のない叱責[しつせき]、辱[はずかし]め、体罰など)がある場合、どんな子どもでも学校に行くのをいやがります。多くの場合、子どもの悩み、両親の対応、学校状況の問題などが複雑に絡み合って、「不登校」という状態がかたちづくられるのです。
不登校の現れ方
困難を乗り越えられない
発達の過程で、子どもはさまざまな困難を経験しますが、それを乗り越えることによってさらに成長していきます。ところが、不登校の子どもは、学校でのちょっとした挫折[ざせつ]、いやな体験、環境の変化などを乗り越えることができず、学校から逃避し、家庭の中に閉じこもってしまうのです。もちろん、子どもたちを家庭に閉じこもらせてしまうような要因が現在の学校教育の中にあることが問題ですし、登校しないということが両親をもっとも悩ませるショッキングなできごととなっていることにも問題があるのです。
家庭内暴力に至る場合も
まず、朝の登校時刻になると、頭痛、腹痛、めまいなどの身体症状を訴え、学校に行くのをしぶるようになります。夕方になると元気になり、「明日は学校へ行く」といって登校の準備を始めたり、休みの日は普通に外出し遊んでいます。学校を休みつづけていますと、朝なかなか起きずに昼近くまで寝ていて、日中は家の中で好きなことをして過ごすようになります。家族が学校の話をしたり、無理に登校させようとすると激しく怒りだし反抗的になり、特に母親に対する乱暴がみられるようになり、無理難題を言い始めます。時には、激しい乱暴のために、家庭生活が維持できなくなることもあります(家庭内暴力)。不登校が長引きますと、昼夜が逆転した生活となり、外出しようとせず、家族からも孤立してしまいます。
そのほかの理由
学校に行くことをいやがることはだれもが経験することです。また、子どものうつ病や統合失調症の症状のために登校できないことがあります。精神遅滞[せいしんちたい]、自閉症[じへいしよう]、学習障害[がくしゆうしようがい]の子どもが、学級で不適切な指導を受けている場合、登校をいやがることがしばしばみられます。家族のかたよった考え方や経済的理由で、親が登校させないこともあります。また、子ども自身が学校を積極的に拒否したり、怠けて学校に行かないこともあります。
-
児童虐待
Posted on December 20th, 2008 No comments最近、さまざまな児童虐待が問題になっています。親の折檻[せつかん]や放置によって、子どもが重傷を負ったり、死亡する事件があいついで報道されています。子どもへの虐待は、ギリシア悲劇の王女メディアや、白雪姫、シンデレラ、鉢かつぎ姫、安寿と厨子王[ずしおう]など、昔から多くの伝説、童話などで語り継がれてきました。その意味では、児童虐待は人間の心に根ざす業[ごう]のようなものです。
児童虐待のタイプ
児童虐待には、次の5つのタイプがあります。(1)身体的虐待:外傷の残る暴行、あるいは生命に危険のある暴行(打撲傷、皮下出血、骨折、火傷、頭部外傷、首を絞める、布団蒸し、食物を与えない、一室に拘禁するなど)。(2)保護の怠慢ないし拒否:捨て子、衣食住や清潔さについて子どもの健康を損なう放置(栄養不良、極端な不潔による病気の発生、学齢に達しても就学や登校をさせないなど)。(3)性的虐待:親による近親相姦[きんしんそうかん]、あるいは親に代わる保護者の性的暴行。(4)心理的虐待:その他の重大な心理的外傷を与えると思われる行為。(5)社会的虐待:戦争や貧困の状態におく、誤った社会通念による扱い、災害やその後の劣悪な状態におく。(1)〜(4)の虐待は、両親やそれに代わる養育者によってなされているものが多く、それだけに子どもの心身を深く傷つけます。
性的虐待とは
性的虐待の加害者の約8割が父親(実父、継父、養父)であり、ほとんどが飲酒下における行為です。母親が不在のときの行為が多いのですが、母親が在宅していても無関心、無力であり、家族がバラバラになることを恐れて娘を保護せずに、逆に事実をおおい隠そうとする例もあります。悲しいことですが、性的虐待を受けている子どもは、父親が加害者であることをなかなか告白しません。父親をかばっているのか、加害者を父親とは思いたくないのかもしれません。
-
夢遊症、夜驚症
Posted on December 20th, 2008 No comments昔から「行動に現れた夢」ともいわれており、夢遊症や夜驚症はけがをすることはないといわれておりましたが、必ずしもそうとはいいきれませんので注意してください。
【夢遊症】
夢遊症(夢中遊行)は、寝ているときにいきなり起き上がり、毛布やシーツをきちんと直したり、歩き回ったり、服を着たり、ドアを開けたり、何かを食べるといった、まるで目的があるような行動をします。うつろな表情で視線を動かさず、いくら呼びかけても反応しません。数分で目を覚ますことがありますが、たいていの場合、再び眠りつづけ、翌朝、何をしたのかを覚えていません。
【夜驚症】
夜驚症は、突然ベッドから起き上がり、恐怖に満ちた表情で強い不安を示し、汗をかき、呼吸が荒く、落ちつかせようとしても反応のないことがあります。子どもは寝ぼけた行動をよく示します。特に、疲れていたり、昼間に強烈なストレスを体験した場合に多くみられます。ぐっすり寝込んでいる子どもを、なんらかの理由でむりやり起こした場合にみられることがあります。病的なものでは、入眠時の幻覚、睡眠中の精神運動性てんかん発作*などがあります。
-
アルツハイマー型痴呆、脳血管性痴呆
Posted on December 20th, 2008 No comments高齢者の認知症(痴呆症[ちほうしよう])は、さまざまな原因によって起こりますが、もっとも多いのはアルツハイマー型痴呆と脳血管性痴呆です。この2つの病気で、認知症高齢者の75〜80%を占めています。
【アルツハイマー型痴呆】
アルツハイマー型痴呆*は、はっきりした原因は不明ですが、脳の神経細胞が急速に減少し始め、脳が萎縮[いしゆく](容積が小さくなる)し、その程度がひどくなると起こってくる病気です。男性より女性に多くみられます。












